第2章 出会い
…頭が痛くなってきた。それはもう、いろんな意味で。
舞の話によると、ここは現代ではなく約五百年前の世界で、今目の前にいる人たちは誰もが知るであろう有名な戦国武将本人なのだとか。
そして話を聞く限り、さくらの知る歴史とは大分違っている。
一種のパラレルワールドか。
「さくら、と言ったか。貴様は織田家ゆかりの姫として扱うことにした」
「…え?」
「未来から来たのだ、行く宛など無いであろう。この安土城に姫として置いてやるから好きに過ごせ」
ニヤリと笑う信長を見て、確かにここを追い出されても困る、と一人納得し、「ありがとうございます」と心の広い信長様に感謝した。
「…おまえなぁ、信長様が安土城に置いてやるって言ってるのに何だ、その無表情は」
眉間にシワを寄せて秀吉は言う。
「しかし舞のように誰にでも愛想振りまくのもどうかと思うがな」
くくっと、面白そうに笑いながら言うのは光秀だ。
その言葉に舞が反応し、「どう意味ですか!」と食らいつくが、全く相手にしない光秀はもう少し言葉を付け加える。
「だが、無表情よりは笑った顔のほうが良いと思うぞ」
「…まあ、確かにそうですね。脳天気に笑う舞を見習えば?」
「ちょっと、家康まで…!」
ギャーギャー騒ぐ舞を止めに入る秀吉。恋人同士なのだが、傍から見たらお守りする兄とお守りされる妹…つまり、只の兄妹にしか見えない。
「しっかし光秀と家康には言われたくないよなぁ。光秀が笑うと不気味だし、家康に至ってはほとんど笑わねぇ」
「…ちょっと政宗さん。俺だって笑いますよ」
「俺だってとびきりの笑顔ができるぞ」
みせてやろう、と笑おうとする光秀を政宗は「光秀は不気味だからやめろ!」と本気で止めた。
ここの人たちは仲が良くて、初対面の自分にも普通に接してくれることが嬉しかった。
本来なら警戒されててもおかしくないのだが、そこは、先に未来から来ていた舞がいたから大丈夫だったのだろう。そんなことを思いながら、クスッと笑い、緊張の解れた顔は自然と笑顔になっていた。
「(ほう…、あやつの笑顔も中々だな)」
肘を付きながら、ニヤリと騒がしい武将たちを優しい表情で見ていた。
これがさくらと武将達との出会いだった。