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イケメン戦国〜桜の約束〜

第9章 恋敵


家康の言葉を聞いて、溜め込んでいたものが溢れ涙が出た。

そんなさくらの腕を引き、ぎゅっと抱きしめる。

絶対に離さないとでも言うようなそんな感情が伝わってきて、さくらもそれに応えるように家康の胸に顔を埋めた。

家康は本当に優しい人だと思う。

最初こそ話しかけにくい雰囲気で、嫌われてるのかなぁと思ったこともあったけど、それでも何だかんだ言いつつ優しかった。

「家康ー!」

二人の時間を楽しんでいると廊下から家康を探す椿の声が聞こえ、思わず抱きついているその手に力が入る。

それに気づいた家康は、再び抱きしめている腕に力を入れる。

思わず顔を上げると、目が合う。

家康は人差し指を口に当て「しー」っと伝えた。さくらは首を縦にコクコクと振って頷き、家康の胸に顔を戻した。

さくらのいつもより積極的な行動に少し驚いたけれど、でも悪い気はしない。寧ろ嬉しかった。それと同時にもっと触れたい、もっと彼女のことを知りたいと思ってしまう。

この穏やかな時間が無くならないように手を尽くしたい。




******




「信長様、私のために歓迎の宴を開いていただきありがとうございます」

信長様の側へ行き、お礼を伝える椿。その姿は着飾っていて美しい。どこからどう見ても良いところのお姫様だった。

「…構わぬ。最近宴を開いてなかったからな、丁度良い」

信長の言葉を聞き、気を良くした椿はにっこりと笑って家康の隣へ行こうとした。

「…時に椿。俺のお気に入りには手を出すなよ」

「お気に入り、ですか?」

「そうだ」

お気に入りが何なのかは分からない。だが、お酒か何かだろうと結論付け、笑顔で「分かりました」と伝えた。

嬉しそうに家康の隣に座る椿を鋭い眼差しで信長は見る。そんな信長に「お酌します」と近寄るさくら。

「…ああ」

酌をするさくらの姿を優しい眼差しで見る信長。

最初に会った頃より健康そうな身体つきになった。好いた男も出来て、元々綺麗ではあったが更に綺麗さが増した。

再度椿の方を見ると、フッと口角が上がる。美しさで言ったらさくらの方が上だな、と考えてると隣から声が掛かる。

「信長様…?」

「何でもない。気にするな」

家康が何とかするだろうが、いざという時は手を貸す事にしよう。

この娘の為に。
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