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イケメン戦国〜桜の約束〜

第8章 縮まる距離


信長にさくらはさくらのままで良いと言われてから早数日、家康とは微妙な空気のまま、その他は変わりなく毎日を過ごしている。

すれ違ったら挨拶はするが、素っ気ない。

他の人からすればそんなものだと言われそうだが、明らかに避けられているのだ。どのように接すればいいのか分からないし、流石のさくらも心が折れる。

「本当に二人って不器用よね」

お饅頭を頬張りながらそう呟くのは舞だった。

「お二人とも相思相愛だと思うんですけどねぇ…」

お茶を啜りながら呟くのは綾だった。

綾はあの事件以降、信長の命で正式にさくら付きの女中兼護衛の忍びとなった。

「早く手ぬぐい渡していつもの二人に戻ればいいのに」

まあ、見てて飽きないので別にいいんですけど、と心の副音声も聞こえてくる。

何気に綾は黒い。味方につけると強いが敵に回すと怖いのかもしれない。流石光秀の元忍び。

「でも家康が一方的に避けてるでしょ?」

「それを何とかしないと、手ぬぐいを渡すに渡せないんじゃない?」と舞が言う。

そんな二人の会話をさくらは他人事のように聞いていると、綾がこちらを見てニコッと笑い、両頬をギュッと引っ張った。…地味に痛い。

「本当に家康様は馬鹿ですねぇ。悪いのは家康様ですから、さくら様は気にしなくていいんですよ。だからそのような寂しそうな顔をしないで下さい」

「…でも」

「大丈夫です。ちょっと間が悪かったんですよ」

困ったような顔をして説明する綾。

流石に主の悲しむ顔をずっと見ているのは心苦しいので、そろそろ動こうと決意する。

さくらの護衛として少し離れたところから見守っていた綾は、何故家康が冷たい態度をとっているのか予想はついている。恐らく、幸村に手ぬぐいを渡すところを見てしまったからだろう。

きっとその時変な誤解をしたはずだ。二人の関係がどう変わるのか面白そうだったから黙っていたが、あの家康の性格を考えると、早めに伝えておくべきだったと後悔した。

「私、家康とさくらちゃんはとってもお似合いだと思うの。だから綾ちゃん、家康の件宜しくね?」

「理由、知っているんでしょ?」と言ってくる舞は、さっきの“間が悪かった”と言う言葉で何となく原因を知っていると気がついたのだろう。

綾は「勿論です」と大きく頷いた。


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