第5章 体質
“薬”と言う言葉にさくらは顔をしかめる。
家康の調合した薬は苦いのだ。初めて飲んだ時は、あまりの苦さに思わず口から出そうになった。
その様子を見てた家康に「良薬口に苦しって言うでしょ」と言われたのは記憶に新しい。
「あんた顔に出すぎ。そんなに薬が嫌なら、体調崩さないように気をつけなよね」
「一応気をつけてるんですけど…」
「…まあ、あんた虚弱体質みたいだし、疲れたと思ったら直ぐに休憩すること。あと、身体が冷えないように気をつけて」
山菜の煮浸しに山椒をたっぷりとかけながら言う家康。
「私も山椒かけてみようかなぁ。辛いの食べると身体温まるって言うし」
「それはやめとけ!」
「そうだぞ、あれは明らかに身体に悪い。ただでさえ体調崩しやすいのに、そんなモノ食べたら余計身体壊すぞ」
政宗と秀吉の二人に言われ、首を縦にふる。
政宗に至っては「アレは作った人に失礼だ」と、別の意味でも怒っている。
「身体が温まる食い物作ってやるから、家康の真似だけはするなよ」
「え、あ…はい」
「あと、これも食え」
そう言ってお膳に大根の煮物をのせる。ありがたいのだが、これ以上はもう食べれそうになく、政宗にごめんなさいした。
そして、皆より一足先に部屋へと戻った。その少し後に家康が薬を持って部屋へとやって来る。
「…何で寝てないの」
あんた熱あるんだけど、と呆れたように言う。
確かに身体はだるいが、寝ないといけないほど辛いわけでもない。むしろ以前の方が身体は辛かったから、それに比べたらマシなのだ。
「このぐらいなら寝なくても大丈夫です」
「あんたってバカなの?あんたの体質は厄介だから、しっかり休まないと悪化する」
これ以上手間かけさせないで、と言われてしまい、薬を飲んで布団の中へと入る。
「面倒かけて、ごめんなさい」
そう伝えると同時に、急激に眠気がやってきてそのまま眠りにつく。
その様子をそばで見ていた家康は深く溜息をついた。そして、さくらの言葉を思い出す。
「…別に、面倒ではないから」
相手がさくらじゃなかったら面倒だと思うのだろう。
でも何故かさくらは面倒だと思わない。むしろ気になるのだ。
「…ゆっくり休みなよ」
家康がこの気持ちの答えを知るのはもう少し先の話。