第5章 体質
安土城では週に一回皆が集まって夕食を食べる事になっている。勿論仕事の都合で誰かがいないこともあるが。
そして食事を用意するのは決まって政宗だった。
「美味しい!」
「お、そうか?まだたくさんあるからどんどん食え」
美味しそうに料理を口いっぱい頬張る舞。その横で、舞とは対照的に少しずつ食べるさくら。
「お前も舞みたいにもっと食え。でないといつまで経っても痩せ細ったままだぞ」
「ちょっと政宗!それどう言う意味?…でもさくらちゃんはほんと少食だよね。政宗の言う通りもっと食べたほうがいいよ?」
心配そうに言ってくる舞にさくらは苦笑する。
食べたいのは山々だが、お腹が直ぐに膨れてしまうのだ。…甘いものは別腹だが。
「ありがとう。でも自分のペースで食べるから大丈夫」
そう言って箸を手に取り料理を食べようとするも、今日は調子が悪い。「ふう…」と溜息をつくと、その様子を見ていた家康が横から手を伸ばす。
「……!」
「…熱い」
突然おでこに手を当てられ驚いた。周りにいた人たちも家康の行動に少し驚いているようだ。
「いつから?」
「え?」
「いつから体調悪いの」
少し不機嫌そうに言う家康。周りのみんなも聴き耳を立てている。
「………、朝からです」
その言葉に家康は大きく溜息をつく。
「あんたさ、体調悪いなら黙ってないで言いなよ。…って毎回言ってるよね」
「また体調悪いのか?お前、体調崩しすぎだぞ」
眉間に皺を寄せて、でもさくらを心配する秀吉。
「たくさん飯を食わないからだ」と呆れたように言うのは政宗。その横で心配そうに見ている三成。
信長と光秀も、表情には出さないもののさくらと家康のやり取りを見ていた。
この時代に来て体調を崩したのは今日が初めてではない。
もう何回も体調不良になっており、その度に家康が気づいて診てくれていた。
現代では病気を患っていたが、元々身体は丈夫な方だった。こちらに来て何故頻繁に体調を崩すのだろうと疑問に思ったが、この時代へ来る前に出会った少年に、病を消す代わりに少し身体が弱くなると言われた言葉を思い出す。
「とりあえず、食べれるだけ食べて。部屋戻ったら薬調合して持って行くから」