第4章 甘味仲間
“ズッ友”の言葉に思わず目を見開いた。
懐かしいその言葉は間違いなく現代で聞いたことのある言葉。
「その言葉って…よく使われるの?」
「あ?…ああ、悪りぃ。ズッ友なんて言葉聞いたことねぇよな!俺の知り合いがたまにいう言葉なんだよ」
ずっと友達って意味な!とニカッと笑って言う幸。その姿が私には眩しすぎて、でも温かい気持ちになった。
「いいのか?幸。“ズッ友”って事は、恋人同士には程遠いんだぞ?」
「こっ?!な、何言ってんですか、あんたは!」
顔を真っ赤にして信さんに声を上げる姿を見て、何となく分かった。幸ちゃんは色恋系はまだ縁がないんだな、と。
「おい、お前も何にやけてるんだよ」
「幸ちゃんが可愛いから」
「かっ…!あのなぁ、男が可愛いなんて言われても嬉しくねーし!」
「えー、だって可愛いと思ったんだもん」
幸ちゃんの顔は誰が見てもカッコイイ。そして可愛いのは中身だ。
色恋話で顔を赤くしたり、焦ったり、からかわれたり…、確実に信さんに遊ばれてる。そんな二人を見ているのが楽しくて、あっという間に時間だけが過ぎていった。
「もうそろそろいい時間だな」
「そうですね、楽しくてつい長居しちゃいました。…幸ちゃん、また一緒に甘味食べてくれる?」
「まあ、俺ら“ズッ友”だしな。お前が休みの日にまた付き合ってやるよ」
「ありがとうございます」
その後二人に「送ってやる」って言われたが、安土城に住んでる事は言わない方がいいと思い、断った。
そして少し遅くなってしまったので、急いで来た道を戻る。
「(あの橋を渡れば安土城だ)」
小走りで橋に近づくと、そこには腕を組んで橋に寄りかかる家康がいた。さくらに気づくと深い溜息をつき、そして不機嫌な声で言葉を発した。
「…遅い」
「す、すみません。甘味屋さんで出来たお友達と話が盛り上がってしまい…」
深く頭を下げて謝り、ちょっとだけ言い訳をしてみた。
「…友達?」
「はいっ。幸ちゃんっていって、(中身が)とても可愛いかったんです」
にっこり笑うさくらを見て、家康はまた小さく溜息をつく。全く反省してない。
「あんた、秀吉さんとの約束は夕刻までに戻る、だったんでしょ?」
「もう過ぎてるんだけど」と嫌味っぽく言うと、さくらは申し訳なさそうに謝った。