第4章 甘味仲間
夕刻になっても帰ってこないさくらを心配した秀吉は信長に報告し、そして信長が家康にさくらを探すよう命じたのだ。
「…全く、約束ぐらい守りなよね。あと、面倒かけないで」
「ごめんなさい」
しゅん、と凹むさくらを見て、ほんと面倒、と深い溜息をつく。
「…まあ、友達が出来て良かったんじゃない?」
「え?」
「“幸ちゃん”って子と仲良くなったんでしょ」
「うん。また甘味食べようって約束したの」
「そう。別にいいけど今度はちゃんと夕刻までに帰りなよ」
そう言って家康は安土城へと向かう。もちろんさくらが付いてきていることを確認しながら。
「そういえばあんた、なんで秀吉さんと別行動したの?」
疑問に思ったことを聞くと、さくらは苦笑しながら答える。
「秀吉さんと舞さんと私の三人でいたら…間違いなく私、お邪魔虫だと思いませんか?」
「は?」
「お二人は良い雰囲気だったから」
一緒にはちょっと居づらかったんです、と言うと、家康は思い当たるところがあるのか、「ああ…」と溜息をつく。
「確かに邪魔だね。俺も一緒には行動したくない」
秀吉と舞の仲の良さは安土城の人間なら誰もが知っている。
きっとあの二人の中に割り込めるのは三成ぐらいだろう。そんな事を考えながら家康はさくらを安土城まで送った。
「送ってくれてありがとうございます」
「信長様の命だしね。今度城下へ行くときは、手間かけないようにしてよね。あんたに構うほど暇じゃないんだから」
「…すみません、気をつけます」
それだけ言って、家康は信長に報告し御殿へと帰っていった。
この後さくらは信長に呼び出され、一緒にいた秀吉に説教されたのは言うまでもない。
「貴様といい舞といい、未来から来た女は警戒心が足りん。暗くなったら女の一人歩きは危険だ。今後は気をつけろ」
何だかんだ、信長も中々帰ってこないさくらを心配していたのだった。