第4章 甘味仲間
「美味しーい!」
栗饅頭を一口食べて、自然と言葉が出た。そんなさくらに、信さんが「そうだろう」と嬉しそうに相槌をうつ。
「優しい甘さなのでいくらでも食べれそうです」
「だよなー!聞いたか、幸。さくらもいくらでも食べれるそうだぞ」
「たくさん食ったら身体に悪いって何回も言ってるでしょうが!お前もだ!甘いものの食い過ぎは身体に毒だからやめとけ」
「え〜!そんなの無理ー」
さくらは甘いものが何よりも好きで、現代でもよくスイーツを食べに行っていた。
この時代でケーキを食べることはできないが、ケーキに負けないくらいこの時代の甘味も美味しい。
「私、ご飯よりも甘いものの方が好きなので」
そう呟いて、もう一口栗饅頭を食べる。
にこにこと嬉しそうに食べる姿に見惚れて、二人は頬を染めた。
「これはこれは、いいものを見せてもらった」
「……っ!」
そんな二人に気づく様子もなく、パクパクと栗饅頭を食べるさくら。明らかに花より団子タイプだ。甘味限定ではあるが。
「お前、あんま見かけねーけど、安土に住んでるのか?」
「はい、住んでますよ。って言っても、安土に住み始めてまだ日は浅いですけど」
「ふーん、だから見かけたことねーのか」
幸ちゃんは流しの行商らしく、露店を開いてるからある程度の客の顔は分かるらしい。
「幸ちゃんが女物の小物を売ってるとか…信じられない。信さんならともかく、幸ちゃん女心分からなさそうなのに」
「お前なぁ…、当たってるだけに腹立つんだけど!」
「当たってるんだ」
クスクス笑うさくらを見て大きく溜息をつく。
「幸が女の子と普通に話してるなんてな。俺は嬉しいぞ」
「はあ?何言ってんですか、アンタは!」
「さくら。俺は今日此処を立つが、幸は当分安土にいる。時間のあるときは相手してあげてほしい」
「それはもちろん構いません。寧ろ嬉しいです。私、安土に友達いないので」
少し恥ずかしそうに言うと、幸は驚いた表情をする。
「え、お前友達いねぇの?寂しい奴」
「…ほっといて下さい。安土に来て日が浅いので仕方ないんです!」
「ま、そういう事にしといてやるよ」
「……………」
「そう拗ねるな。これも何かの縁だ、しょうがねぇから、“ズッ友”になってやるよ」