第4章 甘味仲間
秀吉も舞も中々首を縦に振らず、とても苦戦したが、「二人の邪魔になるのは嫌だし、傍から見ても私は邪魔者にしか見えないから一緒にいたくない」とハッキリ伝え、何とか一人で甘味屋へ行くことを許してもらえた。
秀吉に「遅くなるなよ」と釘をさされ、お小遣いをもらう。そして教えてもらった甘味屋へと向かった。
「いらっしゃいませ」
教えてもらった甘味屋はかなり人気のある店らしく、とても賑わっていた。
「すみませんお客さん、今席が空いてなくて…」
申し訳なさそうに店主が言ってくる。
「そうみたいですね。残念ですけど…今日は諦めようかな。また今度来ます」
そう言って来た道を戻ろうとすると、奥の席から一人の男性が立ち、入り口の方へ向かってくる。
そしてさくらの側で立ち止まり、声をかけてきた。
「美しい姫君、相席で良かったら奥のテーブル空いているんだが…一緒にどうかな?」
「え?」
「帰るなんて勿体無い。此処で出会ったのも何かの縁だ。連れもいるが、君さえ良ければ一緒に食べよう」
「……えっと、」
「此処のおすすめの栗饅頭はすごく美味しい。是非君に食べてもらいたいんだ」
「……!」
知らない人にはついていくな、と秀吉に何回も釘をさされたが、“栗饅頭”という言葉に惹かれ、一緒に食べることにした。
「すまないが栗饅頭もう一つ追加で頼む」
「かしこまりました」
赤髪の男性は店主に栗饅頭を注文し、さくらの方へ向く。
「さて姫君、君の名前を教えてくれるかな?」
「…さくら、と言います」
自分の名前を教え、相手の名前も教えてもらった。赤髪の男性は“信さん”で、もう一人の赤い服を着た人は“幸”と言うらしい。
「信さんと幸さん、ですね」
「…おい、“幸さん”はやめろ。“幸”でいい。さん付けは慣れてねぇから」
「えっと…、男性を呼び捨てにするのは慣れてなくて……」
ぶっきらぼうに言う幸と困ったように言うさくら。
どうしようか悩んだ結果、「あ!」とさくらは声をあげる。そしてニッコリと笑顔で言った。
「じゃあ“幸ちゃん”って呼びますね!」
その言葉を聞いた幸は「はぁ?!何でそうなるんだよ…!」と、やや大きな声で叫んだ。