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【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)

第5章 ーわびぬればー 同田貫正国


同田貫正国



俺は手入れ部屋の中で主に手紙を書いた。


いつ出られるとも分からない手入れ部屋の中で。






俺はもう耐えられそうにない。

お前にいったいどれだけ逢っていないと思う?

もう二ヶ月は経ったぜ、気が狂っちまうてんだ。

もうこうなりゃ身を捨てたも同然だ。

そんならいっそ身を捨ててでもおまえに逢いに行く。


もう耐えらんねえ。





書いた手紙を主に渡してくれるよう、俺が部屋から出ないように見張っているへし切りの奴に渡した。

奴はちょうど通りかかった薬研にそれを渡し、あくまで俺の監視を離れるつもりはないことが読み取れる。


俺は深いため息をついた。


話は約四ヶ月前にさかのぼる。





俺はずっと心の内に秘めていた思いを主に伝えた。

許されねえことは分かっちゃいたが好きなもんは好きだ。


俺にはその気持ちを隠し続けるほどの忍耐力はなかったらしい。


どうせ気味悪がられるだろうと悲観しつつも伝えた思いは拍子抜けするほどあっさりと受け入れられ、それどころかあいつもずっと同じ思いを抱えていたという。

俺は嬉しさを通り越して呆れていた。


何で俺みてえな武骨ものを。主も見る目がねえなあ、と。

以来俺たちは何度も愛を交わしあった。
俺は本当に主が愛おしくておかしくなりそうだった。



そして俺にはその愛の喜びをうまく隠しおおせるだけの余裕がなかった。

ある夜、主の寝所で腕枕をして添い寝をしているところを俺の最近の行動を不審に思っていたらしいヘし切りに見られた。




それ以来俺は手入れ部屋に事実上閉じ込められている。





二ヶ月は待った。

それすらも我慢するのがやっとだった。




こんなに待ったって言うのに他の連中は俺を出すつもりなんてないらしい。





こうなりゃあ仕方ねえ。この身を滅ぼしてでももう一度お前に会いに行く。




そしてあの手紙を書いた。




 わびぬれば 今はた同じ 難波なる

  身をつくしても 逢わむとぞ思ふ
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