【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)
第11章 ー名にしおはばー 鶴丸国永
「主、好きだ、好きだ……!」
俺は今日、主に自分の思いを伝えた。
素っ気なく断られてしまうのだろうと半ば既に落胆していた俺は、主の香りに包まれたことの意味に気づかなかった。
ふわり、と鼻腔をくすぐる大好きな人の香り。
気づけば主は俺に抱きついて、幸せそうな笑みを浮かべて見上げている。
「私もですよ、鶴丸さん。……国永、私もあなたをお慕いしております」
……こりゃあ、驚いた。
真っ直ぐ向けられる好意に戸惑う。
曇り一つ無い綺麗な主の瞳に射抜かれて、俺は頭を抱えた。
思い出される、毎夜の夢。
夢の中で俺は何度主と肌を合わせて、愛し合ったことか。
儚い夢であっても、俺は十分に興奮した。
「あー、ごめんな。こんな情けねー顔見せちまって……」
服の袖で顔を隠し、そっぽを向く。
目の前の純真無垢なようすを見て申し訳ないと思うと同時に、どうしても夢を現実にしたいと思っていた。
主、どうかそんなことを願う俺を嫌いにならないでくれ。
「嬉しいよ……。ほかの方にバレてはいけないから今まで通り過ごしましょうね」
「え?」
驚きの連続だぜ。
こっちは長年抱えてきた恋がようやく実ったって言うのに。
触れられないどころか夜中にこっそり会うことすらできないのか?
……そんなこと言われたってなあ……。
会わずにはいられないよ、主。
添い寝をするだけでいいから、何とかならないのか。
そりゃもう、主もビックリ仰天する様な方法で、絶対知られないように行くからさ。
覚悟しろよ、主。
名にしおはば 逢坂山の さねかづら
人に知られで 来るよしもがな