【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)
第4章 ー住の江のー 山姥切国広
ああ、辛い。
俺は心が弱い。
押さえても押さえても主への思いがこみ上げてくる。それは結ばれた後の今でさえ変わらない。
いやむしろ一度結ばれ、心と体であんたの愛を感じてしまった後である今の方が耐えられない。
人目を忍ばなくてはならないと言うことは分かっている。
逢いたいのに逢えない。
たとえすぐ隣にいても触れられない。
もどかしくて体中がうずうずした。
昼間ろくに主と落ち着いて逢うことが出来ないのでせめて夜、夢の中でも良いから主を俺一人のものにしたかった。
しかし俺は本当に心が弱い。
夢の中であってさえも後ろめたさから人目を気にして、主に触れることも、あう事すら出来なかった。
他の奴らに知られてはいけない恋がこんなに辛いものとは知らなかった。
住の江の 岸に寄る波 よるさへや
夢のかよひ路 人目よくらむ