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【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)

第6章 ー月見ればー  三日月宗近





「ふむ、まだ夜は明けぬか」


普段は共に夜更けまで語らう小狐丸も、今日は先に寝てしまった。

俺は一人、自室の戸を開けて月を眺める。


もうすぐ満月だろう。


自分の心情と相容れない眩しい月明かりに照らされ、彼の瞳に宿る三日月はきらりと輝き、揺らめいた。




「……秋だな。どうりで夜が長い」




はあ、と柄にもなく深いため息をつき、盃に手酌で酒をついだ。




「主よ……」






届くことのない言葉を、思いを、一気にぶちまけてしまいたくなる、そんな月夜。




この本丸に来て、俺は一度も戦いに出たことが無かった。

俺が顕現する頃にはもう部隊編成はほぼ固定されていて、いくら力をつけようとも近侍の同田貫をはじめとする精鋭部隊の奴等には敵わなかった。


見せつけられる、経験の差。



主と過ごした、時間の差。




主なりに気を遣ってくれているのか、俺はそれでも、彼ら精鋭たちには及ばないまでも、主と関わることができているが。




会うたびに惹かれていく。

話すほどに心がかき乱されていく。





主、主よ……。





俺はお前をこんなにも恋い慕って、心乱れているというのに、なぜだ……?









秋は俺を苦しめる。

いくら物思いに沈んで、どんなに涙を流そうとも。







長い長い秋の夜は、まだ明けない。







 月見れば ちぢに物こそかなしけれ

  我が身一つの 秋にはあらねど
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