【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)
第2章 ー花の色はー 蜂須賀虎徹
俺を贋作なんかと一緒にしないでほしい。
そうは言ったが、別に俺に関わるなとは言っていない。
なのに俺の主は長曽根虎徹ばかり珍重して俺などいないかのように扱った。
あの人は俺の心を知らないみたいだ。
打撃力もあり、見栄えもする俺をほしがる奴は沢山居た。だが俺は今までのどの主にもあまり馴染まなかった。
ある日、俺はお前の刀となった。
お前は俺を顕現させた。
するとどうだ、そこにはすでに贋作がいる。
俺は俺を特別に扱わない主に興味を持った。
……いや、興味を持たないどころか、お前は俺が顕現したというのにまだ贋作なんかを近侍として常にそばに侍らせた。
贋作を凌ぐほどに強くなった今でも主の近侍は変わらず長曽根虎徹だ。
誉をとっても長曽根の時ほどの笑顔は見せてくれない。なぜ俺ではないんだ。
今朝は一雨きそうな鉛色の空の朝だった。
俺は気もそぞろのまま出陣し、重傷を負って帰陣した。
主は即座に帰城させ俺を手入れ部屋へ連れて行く。
「ゆっくり休んでね。ごめんなさい、私が無理に出陣させたせいよ・・・・・・」
出陣したときは降っていなかった雨が今はしとしと降っていた。
せっかく咲いたばかりの本丸の桜はこの雨で流されてしまうのだろう。
三日は養生しただろうか。もう日付の感覚もなくなっている。
雨はあの日以来ずっと降り続けていた。
桜は無惨に散っていく。木の下には美しい絨毯が出来ていた。
こんな所で眠りこけているうちに俺は輝きすらも失った心持ちがした。
主への思いは消えないと言うのに・・・・・・。
花の色は うつりにけりな いたづらに
我が身世にふる ながめせしまに