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【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)

第1章 ーあしびきのー 同田貫正国



俺は刀だ。

そんなことは知っている。


俺は主によって顕現された刀の九十九神だ。


そんなことは分かっている。



刀であり、九十九神である俺が人を恋い慕うことがあってはならない。




んなこと重々承知だ。




顕現してからこの本丸の主戦力として戦い続け、時間遡行軍との戦いが終わった今日まで、俺の思いが変わることはなかった。

昨日よりも今日、今日よりも明日。

俺の思いは積もるばかりだった。



それが許されないとは知りながら。




俺は、主を愛している。




最後の敵を討ち果たし、帰城したのが昼過ぎだった。
それからずっと祝宴は続き、もう夜も更けたというのに終わる気配がない。

それだけ主は他の連中からも慕われていたと言うことだ。

俺達は夜明けと共にただの刀に戻る。

二度と会えなくなる主のことを思うともうどうしようもなく切ない気持ちになるので、俺は一人部屋に戻って酒をあおった。


「あー、くそっ。諦めらんねえって言ってんだろうが」


諦めろ。


諦めろ。



何度も自分に言い聞かせた。

だが諦めろと言えば言うほど恋しい気持ちは膨れ上がる。

俺はもう主とは顔を合わせないことに決めた。



本当は片時もおまえと離れずにいたいというのに。




今逢ってしまえば俺はあいつをどうにかしてしまいそうだった。

満月が煌々と輝いている。



月明かりに照らされた山の稜線をぼうっと眺めていると、ケーンと鳥が鳴いた。

「あれは山鳥か・・・・・・」

あの山鳥も恋しい相手を思って鳴いているのか。

俺も山鳥と同じ苦しみを、孤独を、かみしめて一人静かに刀に戻らなきゃなんねえのか・・・・・・。



「くそっ!主・・・主・・・・・・!」


酒が回ったからか、柄にもなく涙した。


堅く握りしめた拳を床に打ち付ける。




声を押し殺す力もなく、だらしなく号泣した。



「お前を連れ去りてえよぉ、主っ・・・・・・!」


泣きつかれたからか、酔ったからか、そのまま眠り込んでしまった。



おまえを片時も離れず守っていたかった。






次に現世に呼ばれるときには、俺も人間になりてえなあ・・・・・・主・・・・・・。






 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
   長々し夜を 一人かも寝む
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