第2章 興味がない(へし切長谷部)
「じゃあね、また明日」
傘がないのでぼうっとしていると、同じく掃除当番だったあの女子が挨拶をして帰っていく。
「・・・・・・まて、お前」
そいつは呼び止められるとは思っていなかった様でかなり驚いていた。俺も自分が呼び止めるとは思っていなかったので、かなり驚いている。
「・・・・・・名前は」
呼び止めたは良いが特に何かを言いたかったわけでもなく、取り繕ったように発せられたのがこんな言葉だった。自分でもバカなことを聞いたと思った。俺は未だにクラス全員の名前を覚えていない。
「私はだよ」
あいつは呆れたように笑って踵を返して帰って行った。
言いたいことは特にない。だがもう少し話していたい。教室で一人雨宿りをしていても楽しいことなどない。俺はあいつに一緒に雨宿りをしてほしいらしかった。
追いかけようか悩んでいると、あいつ自身が戻ってきた。
「何だ、忘れ物か?」
もっとマシな言い方は出来ないのだろうか。あいつは首を縦にも横にも振らない。
「長谷部さんこそ、一人で何をしているの?」
痛いところをつかれた。傘を忘れたなど言えたもんじゃない。空は朝から鉛色でいつ雨が降ってもおかしくなかった。家を出るときには急いでいたので雨宿りくらいしてやると見当違いの英断をしてしまったことを今更後悔する。
「傘、忘れたの?」