第13章 ハンサムな彼
彼女はそれだけ、辛い過去がありながら、どうして、あんなに楽しい事を全力で出来るのだろう。
ソクジンは練習室で彼女が他の練習生に言われていた事を思い出した。
多分、それは…彼女が今まで聞き続けてきた言葉のはずだ。
なのに……ソクジンは思う。
何故、自ら辛い道を進むのかと、
引き取られて、暖かい家庭で過ごしてれば、何も今みたいにずっと辛くはなかっただろうに……
「なんで、それなのにアイドル、やってるの?人が苦手じゃ、ステージに立つのだって怖いんでしょ?」
「彼女………恩返し、したいんだそうです。」
恩返し?
「どういう事?」
「今、自分は愛されてるから、幸せだから、彼女を拾ってくれた家族と彼女の音楽を愛してくれた人達に………自身の気持ちを伝えるために音楽をしているそうです。」
「そんなの……彼女が辛いなら意味ないじゃん……」
「そうかもしれないですね……でも、あいつ不器用なんです。
あの暗い地下室で何度も思いを綴り続け、昔から歌と踊りが大好きで、
言葉を覚えるより、音楽を最初に知っていたあいつだから、……気持ちを伝えるのは、音楽なんだと思います。」
ユンギの言葉は何度聞いても、ソクジンには理解出来なかった。
他人しか思わない。彼女はいつ自身を……
思うのだろう。
「だから、俺達がいるんです。」
「え?、」
「あいつは自分より他人を優先するから、
俺達は他人より彼女を優先する。」
ユンギの言葉は、実に重い愛だった。
でも、彼等が彼女を愛する理由はきっと彼女の深い部分やそれ以外の沢山の事を知ってるからなのだろう。
きっと彼女は全力で彼等にも、愛を注いでいる。
だから、彼等も愛を注ぐのだ。
「今、あいつが気になるなら、今はわからなくてもわかりますよ…あいつの事」
「そっか……それはどうだろうね……」
「いや、絶対なるとおもいます……彼女に懐かれるとやばいから……」
「え?どうヤバイの!?」
「死にます……」
「死ぬの!?……ねぇ?どういう事!?」
「……寝ます……」
「先を言ってよ!!ねぇ?ユンギ」
ソクジンはユンギの身体を揺らすが、彼はピクリとも動かない。
「なんなんだよ………」
でも、彼の言う通り、彼女と話して見たくなったのは、事実だった。