【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第17章 素直な心
そういって梓も納得し、2人とも、雅の元に必要以上に近づく事はしなかった。それでも、ちらっと時折安室は雅の様子を気に掛ける。
「安室さん?」
「はい?」
「気になるなら少しお話してきてもいいんですよ?」
「いえ…そんな…」
「さっきから心配そうに見てますし…お客様も空いてきてほぼ常連さんしかいないですし…」
「それじゃぁ、お言葉に甘えて…」
そういい珍しくも安室はポアロのエプロンを外して雅の元にやってきた。
「ここ、いいですか?」
「え…あ……はい…」
「…どうしたんですか?」
「…安室…さん」
「相談があれば、僕で良ければ聞きますけど?」
そういわれた雅はパタンとパソコンを閉じた。
「何かあったか?」
「いえ…そんな…何も…」
「君がそういう時は決まって何かがある時だ。」
その物言いはすでに『安室』ではなかった。かといって『公安・降谷』とも少し違っているようにも見える。
「なかなか時間取ってやれないのはすまないと思っている。そして君がこの席をあえて選んだという理由も大体検討はつく。」
「…解らないくせに…」
「…クス、そうしておくよ。」
そういいながら、キョロキョロとあたりを見渡した安室。にっと笑うとスッと雅の顎を持ち上げて重なるだけのキスを落とす。
「…――!!??!?!?」
「今はこれで我慢してくれ」
そう言い残すとクシャリと頭をなでてその場を離れた。梓の元に戻ると安室は色々と話をしている。
その会話は梓の顔の表情からしても、きっと、大方安室の作り話だろう。それでも心配そうな顔から、笑顔に変わっただけで、うまくいってくれたんだろうと雅は感じた。
「…・・にしても…突然キスするなんて…ずるいよ…」
そう呟いていた。それから少しして、雅もポアロを後にする。
「長々とすみませんでした…」
「いいんですよ!!あそこの席、案外静かだし、お客様も少ない時間帯だったし。また来てくださいね!!」
「ありがとうございます」
そうしてお会計を済ませた雅。見送られる間も、やはり聞きたいことが聞けなかった。
「風見さんに聞いた方が早いのかなぁ…」
そう思うようになってしまっているほど、雅は落ち込んでいた。