【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第10章 情けない…
そう言われても雅は正直覚えていなかった。それもそのはず。組織の事に関して、降谷からあまり話さないのも解って居る。それに突っ込んではいけないと何かがその度に騒ぐのだ。だから敢えて聞かない様にしていた。
しかし、さっき抱き締められた時…僅かながらいつもの降谷とは違う香りがした。少し甘い様な…そんな香りだった。
「あの…聞いていけない事なら返事しなくてもいいから…」
「ん。何?」
「その…ベルモットさんと…その……」
「ん?」
「抱き合った?」
「…してないよ。」
「でも…甘い香りがする…」
「そうか?まぁ、彼女との距離は通常より近いからな…」
「移る位の距離?」
「それはどうかな…車に乗って移動して…カフェでコーヒー飲んで、レストランで食事をして…その程度か…?」
「歩く時とか…」
「雅…」
そういうと雅の言葉を遮りながら立ち上がり、ふわりと包み込んだ降谷。
「ベルモットとの関係で君が思っている様な肉体関係は無いよ。安心して…ただ、距離が近いし、何か移動したりと言う時には大抵僕の車になる。そして多少、腰に手を回したりして歩く事もある。でもそれだけだ。」
「…降谷…さん…」
「こうして抱き締めるのは君だけだし、何にもとらわれることなく、演じる事のない素の姿をみせられるのは雅、君だけだよ…」
「……ッッ」
浮気をしている時の男の常套文句と解ってはいるものの、雅は降谷のその言葉がそれにあたるとは思えなかった。自分が負となる事もさらけ出してしまうこの男相手にそんな思いは抱くだけ時間の無駄であると…そう感じていた。
そんな時降谷の体を押し戻して立ち上がると、キッチンの灯を止める。弱火にしていた為何とか間に合った。その時だ。後ろからまたしても抱き締められる。
(え…と…このシチュエーション……)
降谷の腕の中で雅は固まっていた。まだ体はそこまで熱くは無い。という事は、=まだ熱は無い…
「雅……」
「…はい…」
その返事だけすると、雅の首筋にそっと唇を寄せる降谷。さっきまでの軽い咳も収まってきているのか…さっきまでは淋しく感じていた、鼻をくすぐるその香りが甘い毒の様にも感じられた。
「降…ゃ…さん…」
「少しだけ…」
そう言うと首筋にキスを落とす…