【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第10章 情けない…
ベルモットと別れて自宅に帰る。着いた時にまずやる事は何もしかけられていないかの確認だった。一通り確認を終え、
車を降りる。
(…誰だ?誰かいる…)
見間違いではなく、確かに家の前に誰かが居る…一瞬警戒をしたものの、降谷はすぐにその顔を緩めた。
「何してる?」
「…にゃぁ……」
「君はいつから猫になった…クス」
「だって…降谷さん…その…仕事早めに切り上げておせっかいかもしれないとは思ったんですけど…来たら誰もいないし…」
「ハァ…」
そう小さなため息を吐く降谷の後ろからついて部屋に入った雅。『お邪魔します』と言いながらも部屋に入る。
「ケホ…ケホ…」
「もしかして…風邪ひいてますか?」
「いや…気にするほどじゃない。日中もそれほど咳は出なかった。」
「でも…ほら…着替えてあったかくしててください?あ、台所借りてもいいですか?」
「…あぁ構わないが…」
そうして台所に立つと雅はスーツを脱いで、袖をまくり、降谷の雑炊を作り出した。即席の物とはいえ茶碗蒸しも添える。
「へぇ…雅も料理、作れるんだ…」
「それなりには…降谷さんほどじゃないですけど…」
「そんな事言うなよ…」
そう言いながらも後ろからそっと抱きしめた。しかし、その至近距離で香りが解らない程雅も鈍感ではなかった。
「もしかして…食事…食べてきました?」
「…あぁ。でも大丈夫だ…冷蔵庫に入れておいてくれたら助かる」
「でも…おいしくない…」
「そんな事ない。」
「……あの…降谷さん…」
「ん?」
背中越しにいる降谷に雅は問いかける。しかし言葉が上手く見つからない。
「今日降谷さんの車に似たスポーツカー…見たんですよ?」
「……ん」
「それに…降谷さんにすごく似た人も居て…」
「ん…」
「…あの…・・」
「成瀬、たぶんそれは全部僕だ。」
知りたかった事実の様な、そうでない様な…複雑な気持ちになったのも事実だった。ゆっくりと腕を緩め手を引きテーブルに連れて行くと座らせた。カタンと椅子を近くに寄せて降谷自身も座ると話しだす。
「金髪の、すごく目立つ女性だろう?それはベルモットだ。実際僕も君と視線が合った。でも気付かないフリをするしかなかった。」
「ベルモットって…女性だったんだね…」
「あぁ。随分前に1度話したはずだが…」