【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第7章 …鈍感!
「原因はそれだったのか?」
「……」
「勘弁してくれないか…」
「……降谷さん…」
勘弁してくれ…そういわれた雅はいてもたってもいられなくなった。すでに心の中は影が覆い、闇で埋め尽くされそうになっていた。
「…ほら…やっぱり…呆れたんでしょ?こんな子供じみた理由で…良いんです。」
(言った時から別れは解ってた…)
大人で出来る降谷にとって、こんな感情は邪魔でしかないはず…そんな事は解って居る。それなのに抑えきれなかった…それに加えて泣いてしまっている自分が居る…雅は思っていた。
もし自分が降谷だったら…呼び方1つでふてくされて…イライラしている彼女は面倒くさいはずだから…
「成瀬…」
ほら…もう雅から成瀬に戻ってる…
しかし雅の耳に届いて来るのは思ってもいない言葉だった。
「何でそれだけの事を黙ってた…」
「だって…そんな言い分…大人な降谷さんには邪魔でしょ…」
「僕をなんだと思ってる。大人な訳あるか…」
「降谷…さん?」
一層強く抱きしめる腕の中で降谷の言葉を聞いていた雅。
「僕がどれほど名前で呼びたかったか解るか…でも付き合い始めてすぐに名前で呼んだらおかしいだろ…それに突然前触れなく名前で呼んで成瀬に引かれたらどうする。軽い男だと思われたら僕は君に嫌われるだろう?」
「そんな…」
「安室透として…演じる事何か簡単さ。だけどそうだな。いくら演じても君の言うとおり、発する声は僕の物だ。……でもだとしたら遠まわし過ぎるんだよ…言ってくれなくては僕だって解らないさ。」
そこまで言うとゆっくりと腕を緩め降谷は雅の頬に手を添えて視線を合わせる。
「成瀬以外は僕にとって『その他大勢』なんだ。でも君は…雅は違う。名前を呼ぶにも、気持ちを伝えるのもどれだけ迷って、どれだけ緊張するか君は解って居ない。」
「降谷…さん」
「其れに目の前で君の恋人が風見だと言われた時の僕の気持ちが解るか?どれだけ違うと叫びたかったか…」
そう言いながらそっと髪を梳き、一房指に絡ませた。