第7章 …鈍感！

「その嫌悪は僕が原因か？」
「……それなら…自分の胸に手をあてて聞いてみたらいいじゃないですか。」
「答えになってると思うか？」
「…ｯｯ」
「ﾀｸ…」

少しだけネクタイを緩めると降谷は距離を詰める。それでも一切として雅に触れようとはしなかった。その距離に耐え切れなくなってきた雅はゆっくりと話出す。

「…もし何かがあったとしても…私の我儘です」
「ほう…その我儘を僕が僕の胸に手をあてて解るとは思えないんだが？」
「でも！その原因は……」

ゲンイン　ハ　アムロサン……　　

「その原因が僕だというのか？」
「……」
「成瀬…！」
「…ぉいい…」
「ん？」
「もう…いいです…」

そういいペコリと頭を下げて背を向けようとした雅の腕を掴んだ降谷。

「もういいじゃ解らない。そんな言葉で納得できるものか…！！」
「納得できなくても納得してください！」
「無理だ！」
「…離してください」
「嫌だ。」
「降谷さん…！」
「離したら僕の目から逃げるだろう？まだ話は終わってないのに」
「…・・・」
「僕が一体成瀬に何をした！」
「……ほら…それです…」
「それって…」
「本当に気付かないんですか？」
「…成瀬？」
「……降谷さんの鈍感！にぶちん！！」
「ちょっと待て。そう言うならそれなりの言いぶ『言い分ならありますよ！！』」

降谷の言葉に被せるように雅は言葉を発した。言ってはいけない…解って居るのに…何故だろう…降谷を目の前にして子供じみた言い分を止める事が出来なくなっていた。

「いっつもそう…いつ行っても…女子高生の蘭ちゃんや…園子ちゃん…バイトの梓さんでしたっけ…その方達はみんな…名前で呼んでるのに…私はいっつも成瀬…て名字で…」
「成瀬、それは…！」
「解ってますよ！仕事だって…それに公安を隠すための安室透の言葉だって！！それでも…だったら偽名の時ですら名字じゃないですか…それなのに…」
「成瀬…」
「呼び方にこだわってるなんてほんと…バカ見たいって呆れられるって…解ってた…だけど…いくらあそこでは安室透でも…声や唇は降谷さんのだもん…！それなら…もう聞かなくていい様に…行きたく無くな『雅…』…」

不意に名前を呼ばれ気付けば降谷の腕の中に居た。