【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第5章 カンパリのキス
朝を共にした日から、およそ半月…
自分から初めて背中に寄り添った日から、1週間…
それでも降谷と一緒に仕事をするようになってからは…どのくらいの年月が経った…??
どれだけ経ったか解らないものの、こんな感情なんて持ったことが無かったはずなのに…
「…ぅぁぁああ!もぉ!」
その雅の言葉に辺りは声をかけるにかけられない状態になる。しかし雅の仕事は順々に進んでいく。
(絶対成瀬、何かあったな。)
(また降谷さんの仕事か?)
(それか…月イチのあれか?)
(…イライラしてんなぁ。)
しかし、そんな回りの考えなど気にもしない様子。それにしても、今日はまた一段と手のスピード、入力の文字を追う目の性格さ…全てにおいていつもの作業効率をはるかに上回っていた。そんな時だ。
「おい、成瀬。今夜空いてるか?」
そう声をかけたのは降谷だった。
(ふ…降谷さんが……動いた!!!)
(確かに…どうするんだ?)
そこに居た全員がかたずをのむ様に見守った。
「…そうだとしたらなんでしょう?」
「風見を連れ出してくれ。」
「私が…ですか?」
「そうだ。」
(何だ…任務か…)
そう。任務の前の打ち合わせには大抵『連れ出してくれ』の号令がかかる。それが電話の時と直接赴くときと2パターンあった。
雅よりも誰よりも、周りに居た他の人間が残念がった。そんな事とはつゆ知らずに雅は解りましたと返事をする。そうして携帯で風見に連絡する。
『…降谷さんが?』
「そう。だから今夜は空けておいてください。」
『…そういう事なら…解った』
「場所はおって連絡くれるそうですが…」
そうして電話を切った。はぁっ…と溜め息を吐くものの俯き、ふとした瞬間に降谷の温もりを思い出す。
「だめ…忘れなきゃ…ーーー!ッッ!!」
そう呟き目を瞑り1つ深呼吸して再度パソコンに向き合った。
忘れなきゃ…
こんな事ずっと残してたら…
こんな感情…ダメ…降谷さんは上司…
(じ…上司…今さら…?それ以外の感情なんて…)
今ようやく雅は自身の中に降谷に対して上司として以外の気持ちを初めて気付いたのだった。