【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第25章 砕かれた夢
残された雅は少ししょんぼりしながらリビングに向かっていった。
「確かに…驚いたけど…」
そう呟きながらもマグカップに入れたコーヒーに湯を注ぐ。あんなに直ぐ帰っちゃうほど…おかしなことを言っちゃったのだろうか…さっきまでの解析とはまた少し違った事が雅の頭を巡り巡っていた。
「…そうは言っても…零も突然すぎる…」
そう呟きながらもマグカップを両手で持ちながら1つ、ため息を吐いた。
side 降谷――――
雅のマンションの駐車場で愛車に乗り込みながらもなかなか出発できないでいた。
「……まさか、あぁも簡単にフラれるとは…」
どうしようか…明日からどんな顔をして会ったらいいのか…思いもよらない様子のままだった。前々から考えていた。それこそ付き合う前から、雅と一緒に暮らせたら…そんな夢物語を描く様になって、付き合う様になって……自分でもこれほどまでに歯止めが効かなくなるとは思っても居なかった。それでも傍に居たい気持ちが大きくなっている事に気付いた。
ついさっき、まだ1時間そこそこしか経っていないベルモットの言葉がフッと思い出される。
『ねぇバーボン。あの子…本当に可愛い。放っておいたらどこぞの馬の骨に持っていかれるわよ?』
「…チィ!!!」
そんな事、させたくない。俺がようやく……どれほどの思いだったか…
そう考えながらも、やはり胸を打つのは雅の『困る』といったひと言。
思いが通じ合っていたと思っていたのは時分だけか…そう思うと何とも淋しく、行き場のない思いが溢れてくるのだった。そんな時だ。風見から電話がかかってきた。
「…どうした、風見」
『降谷さん。すみません。お休みの所。先日お話しました件の事で…』
そう話しながらも降谷は車を走らせていた。いつでも撮れるようにとインカムを装着していた為、すぐにでも発車は出来る状態だったのだ。
「……そうか、解った。」
『宜しくお願いします。』
「問題ない」
『…あの、』
「どうした?」
『かなりお疲れの様ですが…』
「気にするな。問題ない。…ありがとう。風見」
そうして通話を切ると運転に集中していた。