【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第3章 むぅぅぅ…
かなりお客も退店し、残りは疎らに転々としている店内。風見の食事を楽しそうに見ている時、タイミング同じくして、別テーブルでデザートのオーダーが入り、仕上げのイチゴを飾り付けていた安室。一緒に働いている梓が名前を呼んだ。
「ねぇ!安室さん!!」
「はい?」
「…あーん!!」
まるで恋人の様に飾り付ける苺を口を開けてねだっている。そんな梓にヘタを取り食べさせる安室。タイミング悪く、それを雅は見てしまっていた。
「……むぅぅ…」
「?どうした…?成瀬…口とがらせて…」
「別に……」
しかし、雅の異変には当然風見は気が付いていた。
「成瀬?…本当に、どうした?」
「…なんでもありません…」
「そんな顔して『なんでもない』はいくら俺だって何かあると解るが…」
「別に…大したことじゃないです…」
そう話していると女子高生たちが数人入ってくる。
「キャー!ほんとにカッコいい!!」
「でしょ?」
「あ!こっちみたぁ!!」
そんな女子高生の声を聞いた雅はさらにむぅっと頬を膨らませる。その『むぅぅぅ』の原因にやっと気づいた風見は小さく笑った。
「そういう事か…」
「…なんですか?」
「解りやすいな…」
「だから何がですか…」
「やきもちだろう?降谷さんに対する…」
「そんな事…!!」
急にあげた声に再度、周りの視線が集中する。またしても一気に小さくなった雅を見て、フッと笑いながらも風見はくいっとメガネを持ち上げた。
「たまには素直になれ…」
「ちょ…何言ってるんですか!」
「何って…店員や女子高生にキャーキャー言われてるのを聞いてそんなに不機嫌になってる。」
「不機嫌に何てなってないもん…・・・あっ」
「ん?なんだ?」
ちらと視線を上げた雅の目に映ったのは風見の口の周りに着いたナポリタンのケチャップだった。
「風見さん…子供みたい…」
「は?」
「はい。」
クスクス笑いながらも紙ナプキンを手渡した雅。
「口の周り、付いてますよ?」
「…あ…ありがとう…」
「どういたしまして」
そうしてふわりと雅は笑みを浮かべた。