【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第20章 レンタル彼氏…?
ぞくぞくと中に入って行く。席は指定席の為慌てる事もなかった。
「ここ!ここですよ!」
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。指定席なんですから。」
「うわぁ…楽しみ!!」
「そうですね」
「あと1時間……」
そう話していると安室は『ちょっと手洗いへ…』と言ってその場を離れた。
「待ってますね!」
「はい。」
そのまま一旦会場を後にする。しかし、トイレと言ったはずの安室は出てすぐに携帯を取り出した。
『はい、成瀬です』
「僕だ。済まない、出られなくて。」
『大丈夫です。』
「どうした?」
『先程、家宅捜索で入った所で、降谷さんに関する物が出たんです。』
「僕の?」
『はい。なのでその事についてのご報告ともし帰れるとすれば、何時ごろになりそうかという事の確認に。』
「少し遅くなるが…20時には着ける様に向かう。」
『解りました。お休みの所申し訳ありません』
「問題ない。」
そうして通話を切った。クスリと笑ってしまっていた。確かに業務連絡といえば業務連絡だ。しかし、『家宅捜索』と言われれば、当然雅でなく、風見からの報告でもおかしくないはず。それでも雅から連絡が来たことに、少しばかり嬉しさを隠しきれなかった。
安室は梓の元に戻って行く。2時間のイベントも思っていたよりも早く時間の経過を感じ、梓も大満足の様子だった。時計を見れば終了予定時刻から5分程遅くなったものの、想定内だった。
「夕飯、どうしますか?」
「そうですね…あんまり安室さん拘束してるのも彼女さんに悪いですし…」
「クス…それじゃぁ家まで送ります」
そうして梓と車に乗せて自宅に向かった。どれくらいかして到着するとシートベルトを外す梓。そんな梓の横で安室はカチっとブレスレットを外した。
「そうだ…梓さん?」
「え?」
「これ。」
そう言うと外したブレスレットを梓に差し出した。
「え…でもこれって安室さんの…」
「僕が1日付けていたものですが…」
「そんな、悪いです」
「良ければ貰ってください。楽しかった思い出に」
「…ありがとう」
安室の前に手を差し出した梓はそのブレスレットを受け取った。玄関に入るのを見届けてゆっくりとインカムを装着するとその顔は一瞬にして『安室』から『降谷』へと変わって行った。