第8章 六人目のマギ シンドリア [完]
_____アリババ、シャルルカン修行場
シャル「朝からたるんでんぞアリババァ!」
突き刺さるシャルルカンからの怒号と、油断すれば腕ごと落とされそうな強く重い剣撃。
刀身を通じて伝わる衝撃が腕を貫いて、ともすれば剣を落としそうになる。
アリババは歯を食いしばり、両足でしっかりと大地を踏みしめ体勢を立て直す。
柄を握り直し、睨むように目を向ければ、シャルルカンは一度だけにまりと口元に笑みを浮かべた。
しかしその笑みはすぐにかき消える。
シャル「オラいくぞ!」
眷属器を発動させているわけでもないのに、師の剣筋はしなやかに空気を引き裂いた。
受けてばかりではこちらの身も剣も保たない。剣先が届くまでの刹那を見極め、アリババも真っ正面から向かう、
と見せかけて直前で身を捻り、かわす。しかしその動きはとうに読まれていて、師もまたじゃりりと土を踏みしめて、アリババの逃げた先に身を向けた。
アリ「(やばっ)」
そう思うのと同時に、切り裂かれた風の音が間近に聞こえ、頬の上に冷えた剣先が当てられた。
シャル「馬ぁー鹿。今のは敵に悟られたら死ぬぞ」
師は剣の腹をぴたぴたとアリババの頬に当てる。おそるおそる見上げれば剣以上にひややかな目線が注がれていた。
アリ「す、すいません、師匠」
絞り出した声が情けない。見抜かれていたことが悔しい。師の剣が引いたので、アリババは一旦身を引いて、剣を持ち直した。
アリ「もう一回お願いします、師匠!」
シャル「馬ぁー鹿。休憩だ。前見てみろ、お客人だ…」
そう言うとシャルルカンは振り返った。