第2章 うつつのゆめ シンドバット [完]
ジャー「王が、あなたがずっとこの国にいてくれるなら、脱走もしないしあなたと過ごす時間を作るために書類仕事だって3倍速で片付けるだろうって言うんですよ。まあまた調子のいいこと言ってんなとは私も思いますよ、でもね、言質をとれば半分くらいは執行させられるんじゃないかなって思うんです。半分、1.5倍速でも、なってくれるなら十分じゃないですか。それに!シンはさんがいるなら泥酔挙げ句の乱行、朝起こしに行ったら寝台に女性が5人とか、そのうち一人は未成年とか、余計な仕事を増やすはた迷惑な種のばら蒔き行為を金輪際、一切やらないと言うんですよ!あのシンが!」
ばん!と勢い余ったジャーファルさんが、テーブルを叩いて立ち上がる。
ジャー「……というわけで、どうですか、さん。悪いようにはしませんよ?」
『謹んで辞退させていただきます』
ジャー「そう言わずに!」
『遠慮します!』
おいしいものには裏があるって、あれ、ほんとうだったんだ。わたしはひとつ大人になった。社会ってこわい。あと、ジャーファルさんは子どものときからずっと王様と一緒にいるって聞いたけど、それがよくよく身にしみた。
(お菓子で釣るなんてやり口が一緒だよジャーファルさん…!)
『ごちそうさまでしたおやすみなさい!』
ジャー「待ってください!なにも王の素行を正したいがためだけにこんなことを言っているわけではないんです。そりゃ矯正したいですけど。したいんですけど」
さすが元暗殺者、素早い身のこなしで、ジャーファルさんがわたしの前に立ちはだかる。