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【マギ】短編集 中編集 の予定。

第2章 うつつのゆめ シンドバット [完]




一匙一匙味わってデザートを堪能するわたしを目を細めて眺めながら、ジャーファルさんが口を開いた(ちなみに、ジャーファルさんのお皿はとうの昔に、上品かつ超人的な早食いで平らげられていた。「ついクセで」だそうだ。ワーカホリックっておそろしい)。

ジャー「そのソースに使われている果物、パパゴレッヤといって我が国の特産品なんですよ」

『へええ、そうなんですか!どうりで食べたことない味がすると思った。甘くて香りもよくて、すごくおいしいですね』

ジャー「それから、主菜のパパゴラス。あれも、南海でしか獲れない鳥なんです」

『あの蒸し焼きもとってもおいしかったです!謝肉祭で出てくる南海生物もおいしいし、シンドリアっておいしいものがいっぱいありますよね』


ジャー「そうなんですよ。どれもこの国でしか食べられないものばかりなんですよ。そうだ、この国の食事が気に入っていただけたなら、このままシンドリアで暮らすというのはどうですか?さん」

『ふふ、おいしいものを前にすると弱いですねー。でも、わたしはずっとこの国にいるわけにはいか』

ジャー「勿論故郷が特別なのはわかります。でも故郷以外で食の合う土地、これもとても貴重です。食べ物がおいしいと心癒されますし」

『え、あ、はい、現にとても癒されてますけど、わたしは』

ジャー「故郷に帰れたとしても、いつか離れなければならない事情ができるかもしれません。その点シンドリアならあなたを追い出すことは絶対にない、むしろ出るほうが難しいぐらいです。一生安泰です。王の寵姫いえそこまでしろとは言えません王の“大切な客人”でいいです、そんな方のためならうちの料理人も毎日腕を振るいますから」

ねえ、どうですか。と。訊ねたジャーファルさんの目は、わたしにもわかるぐらい明らかに、笑っていなかった。そして、身の危険を感じるぎらぎらした輝きを放っていた。
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