第2章 うつつのゆめ シンドバット [完]
シン「ようやく俺の愛を受け入れてくれる気になったんだな!」
『…………はいい?』
突然がっしと手を取られてそんなことを言われて、呆然と聞き返す以外に取れるリアクションがあるだろうか、いやない(反語)。
シン「聞いたぞ、俺の好みのタイプを聞いて回っていたそうじゃないか。そんなもの、君に決まっているのに!そんなところも可愛いがな」
(誰だ肝心の動機を伏せて都合の悪い事実だけを伝えたやつは……!)
シン「俺に子どもがいるかどうかまで気にしたりして…そうだよな、大事なことだよな、うん。大丈夫、俺には子どもはいないぞ、だから安心して世継ぎを産んでくれ!」
『いえ、わたしお嫁にいく前にニンシンなんて、そんな親不孝なことは……!』
シン「ははは、はまったくおねだり上手だな。よし、今すぐ結婚しようじゃないか。それで問題ないだろう?」
『問題大有りです』
どうしよう取り合ってもらえる気がしない。こういうときは、三十六計逃げるにしかず。握り締められた手をそろりさりげなく引き抜いておいとましようとして、わたしははっとした。
(抜 け な い !)