第10章 春高前のひと時。
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言われた通りに息を吸う。
その間、背中をゆっくりさすってくれた。
「そうそう、で、ゆっくり息吐けよー」
さっき吸った息を吐く。
それを何回か繰り返した。
「……よーし、落ち着いたかー?」
「木兎さん、まおさんの事
抱きしめちゃってますけど大丈夫ですか色々」
「へ?
……あ゛!?すまああああん!!!!!」
ガバっと私から離れた彼は、見た事の無い
恥ずかしそうな、照れた顔をしていた。
「大丈夫、だいぶ落ち着いた…ありがと」
「うーん、今日はもう帰るか!
外も暗くなってきてるし!」
「…あ、そしたら俺、買い物したいのあるんで
2人で先に帰っててもらっていいですか?」
「了解!ほらまお帰る準備しろよー!」
「えっ…でも練習…」
「いーから!帰んぞー!」
もう少し練習したかっただろう。
なんだか申し訳ない事をしてしまった。
が、ここは彼らに甘えるしかない。
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