第10章 春高前のひと時。
.
「くっそ〜〜ストレート上手くいかねえ!」
「やっぱりブロックもいて欲しいですよね」
「いるつもりで打ってはいるけどなー!
クロスさえ止められなきゃ良いんだけど
そういうわけにも行かねえしな」
「もう少し付き合いますよ」
「サンキューあかーし!」
「ダメ!ちょっと休憩!して!」
キョトン、という効果音が合う顔になる。
さすがにオーバーワーク過ぎる。
私が声を上げることはあまりないから
2人とも素直に従ってくれる。
タオルとスポドリをそれぞれ渡す。
「なあ、まだ練習しちゃダメ?」
「ダメ、あと少し待ってて」
「くっそー!ちょっと外の空気吸うわ!」
そう言って体育館を出て行った木兎。
………なんだか赤葦くんがスポドリを
飲みながら何も言わずこちらを見ている。
「…なに?」
「木兎さんにいつ告白するんです。
いくら単細胞でも、自分の上着貸すなんて
好意ある人にかしませんよ」
「そうなの?」
「たしかにまおさんはモテそうですし
そういう事をされ慣れてるかもしれませんが
そういうもんですよ男って」
「……でも今は迷惑だよ、さすがに」
「まおさんはちゃんと考えてて偉いですよ」
.