第1章 私の気持ち、あなたの気持ち
宏光「俺、るうなの不安になる気持ち、すっごくわかる。俺だって未だにツアー始まる前とか不安になることあるからなぁ」
るうな「えっ?宏光さんも?あんなに沢山のファンがいるのに?」
宏光「まぁね。初めてやる試みとかは特にね。毎回不安になって反省しての繰り返し。しっかりリハしても、いざ本番になると何があるかわからないからね。あーあそこはこんな風にしとけばよかったとか、こっちの方がよかったかなぁとか毎回思う。けど、俺にはあいつらがいる。あいつらが一緒だから乗り越えられるし、頑張れる。るうなにだって仲間がいるじゃん!」
るうな「うん………私………ひとりじゃないんだよね……」
宏光「うん、ひとりじゃない。俺もいるし(笑)」
ひとりじゃない………不安になったら仲間と一緒に頑張ればいい……
さっきまでの不安が、すーっとなくなっていくのがわかる。
宏光さんの声、香り、温もり………全てが私を落ち着かせる。
宏光さんの心に、少し触れた気がした。
宏光「そうだ!」
急に抱きしめられていた腕がとかれ、くるっと体を反転させられた。
宏光さんと向かい合わせになった私は、目をパチクリさせて宏光さんを見た。
宏光「明日のLIVE頑張ったら、何かご褒美あげるよ!」
るうな「ご褒美ですか?」
宏光「うん。何でもるうなが欲しい物あげるよ」
私はニコッと笑う。
るうな「ご褒美欲しいから、頑張ります!!」
宏光「よし、頑張れ!」
頭をポンポンとされると、再び家までの道程を並んで歩いた。
宏光さんからのご褒美が楽しみなのか、それとも宏光さんも私と一緒だというのが嬉しいのか……
きっとその両方が、私の心を軽くしてくれていた。
宏光「じゃ、また明日」
家の前まで来ると、宏光さんはそう言って帰ろうとする。
るうな「あれ?お兄ちゃんに会っていくんじゃ………」
宏光「んーそう思ったけど、また今度にするよ。海斗によろしく言っといて」
そう言うと片手を上げ、宏光さんは帰って行った。
るうな「クスっ、変な宏光さん」
私はそう呟くと、家の中へと入った。