第4章 無垢なる天使
《ピーポンポン♩ お風呂が沸きました。》
少しの沈黙、それを破いたのは機械音だった。
『あ、お風呂が沸いたみたいですね。先に入っていいですよ』
「そうしたい所だけど、俺はもう御暇(おいとま)するよ」
そう言って椅子から立ち上がる雨宮に、真白は目を向ける。
『え、もう帰っちゃうんですか?』
その顔は眉を下げてちょっぴり悲しそうだ。
「うん。流石に年端も行かぬ子と2人きりっで、しかもお風呂は社会的にまずいからね」
『そうですか』
彼女が何故悲しむのか、それはわからない。
ただ、今はそのままでいい。
雨宮は落ち込む真白の頭を撫でてやる。
すると、頬を膨らませる真白が雨宮を見上げる。
『私はもう子供じゃないです』
「ふっそうか。でも俺から見たらまだまだ子供だよ。」
可愛い顔にキスを落としてやりたくなった雨宮だが、そこはぐっと堪えた。
『また遊びに来て下さいね?』
「もちろん。またカフェにも顔出しにいくよ」
重たい扉を押し開き、真白と別れを交わす。
そして雨宮は1人駐車場に向かった。
その時
「ーー」
「ーー」
交わる視線。
雨宮よりかは背が低いが、無造作に伸びた髪を1つに束ねた男はすっと雨宮を見た。
雨宮はそれに気づき軽く会釈するも、その男はタバコを口に咥えながら螺旋階段を登っていく。
「なんだ?」
後ろ髪引かれるも、雨宮は車の運転席を開けて乗り込む。
まさかそれがーー
「ただいま、真白」
真白のつながりある人物とは知らないから。