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空蝉が抱く死体【R-18】

第5章 ミルクとコーヒー



「私には関係ないけど。唯人はさ、モデル並みにめっちゃカッコイイんだから勿体無いわよ? 女性には優しくしないと」


殺人鬼には効果なしの恋愛テクを伝えた女性は、床に散らばった衣服を身につける。

そんな彼女を横目に唯人は理科室のカーテンに目を向けた。


ーー優しく、ね。ーー


「お前も彼氏いねぇじゃんかよ」

「そうなのよ。…って! それはあんたが傍若無人に私を呼び出すからだろ! てか、お前って……、私は佐伯 真澄(さえき ますみ)です! せめて佐伯先生って言ってよ」


そう笑う彼女は、黒の艶ある長い髪に白のブラウス。そして黒のタイトスカートを履く教師であり、今の姿は教師ではない、夜に咲く綺麗な女性だ。


「なら淫乱先生だな」

「もうそれでいっか」


とほほっと、呆れた顔しながらもその表情はどこか温かい。

そんな佐伯に唯人も少し口元が綻ぶ。


二人はセフレというには少し違う。


佐伯は唯人に逆らえない奴隷だ。
でも、唯人の尖った性格を丸めてしまうような飼い主的存在でもある。


「じゃあ唯人、帰りは気をつけなさいよ」

「あんたもな」


そしてプイッと横を向く唯人。

理科室のドアに立つ佐伯は眉を顰めるも口は笑う。


「 全く困った奴ね。そんなんだから友達ゼロなのよ」

「うるせー!」


鬼の形相に変わる唯人の顔に、佐伯は悪戯に笑ってはドアに手を掛けた。


「その顔じゃいつまでも彼女は無理ね。じゃ、私は先に行くわよ。明日は遅刻せずに来なさい」

「気が向いたらな」


そんな唯人に佐伯ははぁっと溜息をつくも、ガラーっとドアを開け、そして唯人のいる理科室から消えた。


「なんなんだよ、あいつ。調子狂わせやがって」


誰も居なくなった理科室。

唯人は静かに目を閉じる。



ーー俺の気持ちも知らないで、あの野郎ーー



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