第4章 無垢なる天使
『今終わりました。暫く猫ちゃんは病院側がお世話をしてくれるみたいです』
「なら良かったよ。でもごめんね、一緒に付き添えなくて」
『いえ、スーツが血で濡れてしまってますし、逆に問題になっちゃいますから。それに、お仕事中だったのに付き合わせてしまいすみません』
「いやいや、もう仕事終わりだし気にしないでいいよ」
猫を病院に預けてから、真白は雨宮の助手席に座りシートベルトをする。
そんな真白の傍ら、雨宮は車を発進させた。
『それにわざわざ家まで送って下さるなんて、本当にありがとうございます』
「律儀過ぎでしょ、真白ちゃん。ま、全然気にしなくていいよ。猫ちゃんを救えたのがなにより」
『優しいですね、雨宮さんは』
何か含みのある言葉に雨宮の眉がピクッと動く。
が、彼はフロントの先を見つめた。
優しいなんて言葉、俺には似合わないよ。
「真白ちゃんはさ、優しい人が好き?」
『え?』
あまりにも唐突な質問に真白は目を丸める。
だが、隣で運転する雨宮の横顔は真剣なようにも思えた。
『優しい人ですか……そりゃあ極悪非道な人よりかは好きです』
「極悪非道って。優しいの反対は極悪非道になるんだね」
『えっと、私の中ではそうなりますね。雨宮さんはどうなんですか?』
切り返された質問。
雨宮はクスッと笑うと真白を見た。