第4章 無垢なる天使
『え、誰?』
「え、真白ちゃん?」
その先にいたのは、公園の入り口で立ち止まる紺色のスーツを纏った男性。
黒の傘で顔が遮られているが、背は高い。
「俺は雨宮だよ?」
そう言うと、くいっと持ち上げられた傘の中、端正な顔立ちをさせた雨宮の顔が露わになった。
相変わらず茶髪の前髪を後ろにかきあげ、サイド、襟足は肩につくくらいまで伸びている。
『え、何で雨宮さんがここに?』
「たまたま通りかかった所、雨に濡れてる子を見つけたら家(うち)に帰そうとしてね」
雨宮はゆったりと確かめるように話しながら、雨により濡れてしまった真白を自身の傘の中に入れてあげた。
驚きで見上げる真白と、雨宮の視線は重なる。
「なんだかお邪魔だったかな?」
『いえ。まさか雨宮さんがこんな所にいるとは思わなくて驚きが』
「それは俺もだよ。真白ちゃんはここで何をしていたの?」
そう聞かれ、真白は視線を白猫に移す。
『あ、怪我してる猫を見たので手当てしてあげようかと』
そんな真白を尻目に雨宮も白猫に目をやった。
白猫はこちらを気にすることもなくどこか遠くを見つめているが、足の付け根あたりから帯び多々しい程の出血をしている。
このままじゃ危険な状態であるというのは視覚から充分な程伝わって来た。