第3章 悪魔は微笑む
「ちょっと飲み過ぎたね。でもあのさ、一応聞くけどなんで気持ちがないのに泣くの?」
そう雨宮が聞いた刹那、愛美は頬に涙を伝せながら雨宮を見る。
「……ず」
「ん?」
「彼と別れた瞬間、やっぱり会いたくなったんでずぅぅぅ!!」
「おわっ!?」
そして愛美は雨宮の腰回りに手を伸ばし抱き着くと彼の腹部に顔を埋めた。
忘れるには一緒にいすぎた。
愛美は力強く雨宮を抱きしめる。
「……なるほどね」
「うわぁぁあん、けんいちさぁぁん」
そんな愛美に雨宮は遠くを見つめた。
きっと、話をしたら2人はよりを戻すだろう。
なにせまだ2人は繋がっているのだから、
ちゃんと幸せな暮らしを送れる。
そう瞬時に思った雨宮。
だが、彼の決断は変わらなかった。
「姫ちゃん、今日は俺を賢一(けんいち)だと思ってくれない?」
ここは彼にとってのサンクチュアリ
聖なる場所だ。
ここなら誰にも邪魔されないし、ここでならどんな罪や法律も破る事が出来る。
だから、これからやろうとしている愚行だって
ーーきっと、許される筈なんだ。