第3章 悪魔は微笑む
「きゃあー! やっぱ石田さんは博識れすね!!!」
あれから愛美と、私服に着替えた石田はソファーに座り、そして缶ビールを片手に話に花を咲かしていた。
酒がかなり入っているせいか、愛美はもうテンションがハイになり呂律が回っていない。
そんな2人に音楽番組に切り替わったテレビは優雅なBGMを流す。
「仕事上色んな人と知り合ったり情報交換するからね。嫌でも知りたくない情報が入るよ。でも、姫ちゃんも風俗してたら色んな人と関わるんじゃない?」
「ああーそーれすねー!! 色んな人来まひたよー! でも、石田さん程カッコイイ人は初めて見まひたー」
「あはは、そりゃどうも。でも、姫ちゃんも可愛いから彼氏とか居るんじゃない?」
雨宮は依頼人の婚約というワードから、愛美に彼氏の有無を聞いてみた。
別に意味があった訳じゃない。ただの言葉のつなぎとして聞いてみただけだ。
だが、そんな雨宮の質問に隣に座っていた愛美はあんなに楽しそうに笑っていた眉を下げる。
「姫ちゃん?」
「私には婚約を交わした人がいたんです。私の事ずっと大好きだって、愛しているって、一生守りぬくって、そう言ってくれる優しい婚約者が居たました」
「うん」
何か始まった。
そう感じた雨宮は隣でぼーっとテレビを見ながら話し出す愛美を見つめる。
「でも私は彼を裏切ってしまったんです。そもそも私は保険金目当てで彼と婚約を決意したから、そこに気持ちなんてなかった。だから彼の事なんてどうでも良かったんです。そう、眼中になかった。だから浮気して……」
「別れた?」
「う、ううっ」
その途端泣き噦る愛美。
雨宮ははぁと深い溜め息をつくと彼女から缶ビールを奪った。