第2章 汚された未来
「まぁ、ちゃんと出頭して頂ければ大丈夫ですから」
そして雨宮は敬語に戻すと、書類をテーブルに戻した。その仕草の傍ら、男は何かを思い出したかのように目を見開いては、ソファーの脇に置いていた鞄から一枚のファイルを取り出しテーブルに置く。
「えっと、これは?」
「あの、小切手です。これを受け取って下さい」
「小切手?」
そんな男の声に、雨宮の視線は男が取り出してきた小切手に目を向ける。
白の長方形の薄い紙に書かれた数字は、なんと500万と記載されている。
「ほう、そんなにこの女が憎いのですか?」
「そうなんですよ。もう腹が煮え繰り返る程に」
男の表情は怒りというより、悲しみを滲ませる。だが、雨宮はそれを見て見ぬ振りをして小切手を受け取った。
「それは大変ですね。では、交渉成立と致しましょう」
「あ、ありがとうございます!」
今回の生け贄は、24歳の風俗嬢か。
雨宮は依頼主がドアを開け、そして閉めるまで笑顔を絶やさない。だが、ドアが閉じれば
「もう、出て来たら? 唯人(ゆいと)」
悪魔が顔を覗かせる。
「けっ。500万とか安すぎなんだよ」
「別に金額とか関係ないだろ。それより、風俗嬢だよ? ゆるゆるのま◯こじゃ興奮出来るかな」
ロッカーの裏に隠れていた唯人という人物。
彼は雨宮よりも背が高く、そして黒のマスクをつけている。
「知らねーよ。お前の感度なんざ」
「相変わらず酷いなぁ。とりあえず、明日決行するよ」
「ヘマするなよ、昴」
「唯人こそね」
そして2人は闇のなか、幾度となく過ちを繰り返す。