第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
驚いたように私を見る双熾と凜々蝶ちゃん。
そして何より、すごませる程度の殺気を滲ませれば男子生徒二人が怯んだように黙ってくれた。
『陰口言う奴なんてざらにいるけど、それに一々文句も言わず、構いもせずにいてやってる方がどれだけ心が広いのかわかってんの?あんたら二人、彼女に守られてんの、わかる?』
「お、お前…っ、ああ!?何様のつもりだ、青鬼院家の養女だかなんだか知らねぇけど、お前こそ俺らにそんな暴言吐いていいと思ってんのか!!そんなき文句があるならてめぇが土下座してる謝れや!!」
『当然のこと言われても逆上するしか脳がないのね、可哀想。いいわ、土下座でもなんでもしてあげる…ただし、凜々蝶ちゃんに向かって吐いた言葉全部訂正してちょうだい?この場で』
「!!!…、は、ははっ…いいよ、それならこっちだって、昨日先輩からもらったとっておきの動画データが……っ!おいお前らァ!!ここに白縹来てんぞ!!!」
呼びかけるように私の名前を叫ぶ目の前の男の考えを読む。
人前で私の痴態を晒すつもりらしい。
…いいよ、慣れてる。
私はともかく、凜々蝶ちゃんが…彼女の間違いを訂正されるならば、それでいい。
私の従兄を救ってくれた彼女は、どうか救われて欲しいから。
それくらいの報いはあって、然るべきだと思うから。
「携帯スクリーンに繋げ!!知ってる奴も何人かいるだろこんなもん…こいつの事なら学年中で話題だろうけど、この女、昨日入学式だったってのに早速男とっ捕まえて旧倉庫で…____」
途端に、ブラックアウトするスクリーンの画面。
私の想像していた映像が映し出される直前に、それは起こったらしい。
何かと思えば、双熾が投影機を床に落として壊してしまっていた。
『な、…っに、して…そ「相変わらずうるさいですね、ブラコンが過ぎますよ、リア」!!違…違う、そんなんじゃな…っ』
なんで、関わってくんの。
なんで私と知らない人の振りをしてくれないの。
なんで、嫌悪される対象である私を護ろうとなんてするの。
「な、…てめ…ッ!!?」
「折角の笑いどころ潰してんじゃねえよ!!…クソっ、こうなったら直接携帯で…」
双熾がそれをまた阻止しようと、動こうとした。
そう、つまりは途中で動けなくなったのだ…動く必要がなくなったのだ。
「………手前、殺されたくなきゃつまんねぇことすんなよ」