第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
〜青城学園高等学校 イベントホール〜
「ボレロ外すなよ、さっき付けてきたやつ見えるから」
『見せちゃいけないの?』
「…エロいことされた後って見せびらかすようなもんだぜ?」
『!…で、でもでも、中原さんとのなら全然嫌じゃな「いいから着てろ、外したら殺す」な、なんで殺されるのそんなので…』
車で送ってもらって、中也も隣で着いてきてくれて、そこに着いた。
「あと、俺今はお前の上司の中原じゃねぇから。それ抜きにしてもだが…何度言えば分かる?」
『…中也、さん』
「なんで口悪いくせしてそんな丁寧な性格してんのかねぇ…練習してこうな。他の奴には呼べるだろ?」
『……ごめんなさい』
「謝らなくていいんだけどな?悪いことしてるわけじゃねえし」
情けなくなってきた。
彼が優しいのに甘えて、彼の簡単なお願いごとさえ叶えてやれない、ダメな主。
今となっては、とりあえずの形とはいえ恋人であるはずなのに。
こんな私に、好きだと言ってくれた人なのに。
「あれ、今日休んでたビッチじゃない?」
「ああ、確か昨日三年の人達とヤったんだっけ?早いわぁ、すごいすごい」
「勉強だけできても中身があれじゃあねえ」
耳に入るようになってきた声が、さらに私の傷口に刺さる。
聴かないようにしてるのに、聞こえてくる声は防げない。
知らないふりをするので精一杯なのだ、私には。
『…じゃ、じゃあ私ちょっと色々テーブル見て回ってくるから』
「あ?何言っ…おい、リア!?」
ご飯を見て回るのを名目に、彼からとっとと離れていった。
忘れてた、学校での私の評判を。
私と一緒になんかいさせたら、中也までどう見られるか分かったものじゃない。
だから、出来るだけ知ってる人とは関わらないようにと…避けていたはずなのに。
私の従兄が、一般生徒に敵意を向けているのを見つけてしまって、咄嗟にその生徒二人と彼の間に割って入ってしまったのだ。
中也のドレスを、濡らしてしまった。
「!?り、リア…何を…っ、どうして入ってきたんです!」
『…責任を感じる主人の身にもなりなさい、双熾。そんなことしたら、真面目な凜々蝶ちゃんが黙ってるわけないでしょ』
「な、…っおい、お前何をしようと…!!土下座して謝れ!!!」
『あんた達も、少しは黙ったらどう?』
声のトーンが、少し下がったのを感じた。