第12章 キツネアザミと矛盾の芽
食べきった頃には余裕そうな表情だが、満足気な笑顔に周りも心を癒される。
こんな光景が見れるとは。
……いやあ、可愛がってて良かったなあ。
などと感傷に浸る中、審査が始まる。
「じゃあリアたん!今回の優勝者は!?」
『みんな♡』
「「「「「「えええ〜??♡♡」」」」」」
「リアたん、これゲームにならなくなっちゃうから、平和だけどね、一応ほら、ねっ??」
『……んー……これ』
指さされたのは、いわゆる“こういうのがいいんだよ定食”。
艶々の握り飯に海苔、だし巻き玉子、焼きウインナー、それから漬物に味噌汁の……なんともまあ日本人心をくすぐるセットはというと。
「あれ意外、てっきり中也って言うかと思ってた」
『中也さんはもちろん一番だけど』
「うん?」
選ばれた青鯖野郎は、理由が分からずおそらく本気で驚いていて。
『…………リアにいつも食堂で出してくれてたのと同じ味がする』
「おや、味でバレるんだ?」
『リアにって作ってくれた味だいすき』
「……ああ、そう」
奴にしては珍しく随分な塩対応だが、あれは……照れてるんだよな?
見た事ねえけど、多分、いやほぼ確実に。
あいつはそういうところは天邪鬼な性質であるし。
『治さん、リアにごはん作ってくれてたのね』
「勝手にそう思ってればいいんじゃない?忘れたよそんなこと」
『…………そっか』
ぽしょりとこぼされた声が響いた瞬間に頭を引っぱたいてリアを取り返し、撫でくりまわす。
「そんなわけが無いからな〜???おまえの舌が間違うわけがないんだから、な〜〜〜????」
『ち、中也さん??なに?なに??』
「奴は性格がひん曲がってるからそうなだけで違うんだよ、読んでみ?大丈夫だから、な??」
『えっと……中也さんがリアのこと大好きなのはわかった』
「あいつもよっぽどだから!!!」
『そうかな……、やっぱり迷惑だったのかもしれな____』
ようやく事の深刻さに気付いた奴が戻ってくる。
「うん、めちゃくちゃ作ってた。リアちゃん食欲ない日ももしかしたら食べるかなってタイミング見計らって作ってたし、僕リアちゃん大好きだから」
『……えと、…………調子に乗って』
「自惚れじゃないよ、本当のことだもの。私が大人気なくてごめん」
『…………』
ほんの一瞬抱きつきに行き、戻ってきた。
