第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
「お前そのちっせぇ体のどこにそんな入るわけ?風邪ひいててそれだろ?」
『低身長に言われたくない』
「だぁれが低身長だって?おい」
今反応した人。
そう返せば簡単にイラッとしてしまう彼が面白くて仕方がない。
『………手料理、美味し…』
「は?何言ってんだよ、手料理も何も美味いもんなんかいっぱいあんだろ」
『…なんでもない』
やはり、私は少し感覚がおかしいらしい。
私のためを思ってご飯を作ってくれたのなんて…不器用だったけれど、私が小さな頃のカゲ様くらいのもの。
実の親の料理の味さえ知らないまま育ってきた私には、私のためにと言われるだけでも魅惑のスパイスにさえなりうる代物で。
「……お前、俺の料理好き?」
『?うん』
「そうか。お前みたいに美味そうに食ってくれる奴初めて見たから、嬉しいよ。作りがいあるわお前になら」
『…ふぅん。……私、手作りのお粥も手作りのゼリーも…初めて』
「そうなのか。俺は病気しねぇからなぁ…けど味わかんねぇだろ、病気してちゃ」
『ううん、美味しい。毎日熱がいい』
とっとと治せ阿呆、とまた軽くチョップされるのだけれど、風邪のせいか反論する気にもなれず、えへへ、と思わずにやけてしまう。
『だって、熱出たらこんなに中原さんに構ってもらえるか…、ら…………い、今の無し』
「悪い、忘れたくねぇから却下…もしかしてお前、俺にかまって欲しくていつも煽ってたのか?」
なんてな、と冗談で笑われるのだけれど、痛いところをつかれてぐぅのねも出ず、ただ顔を逸らして羞恥に耐えるのみ。
すると私の異変を察してか彼は笑うのをやめ、え、?と動揺したような声を発する。
「……まさか図星か?」
『…違うし』
「…あー……その…、悪い。…それ結構クるわ」
『は!?違うっつってんのに分かんないの!?馬鹿でしょ、あんた絶対馬鹿でしょ!!!』
「成程、口悪くなんのも癖になるわこの調子じゃ…安心しろリア、お前すげぇ分かりやすい性格してっから」
違うと反論するのに信じてもらえない。
歳上だからって余裕かまして…低身長のくせに。
『……だって中原さん誰にでも面倒見いいんだもん』
「…もっと面倒見て欲しかったの?」
『違う』
「可愛いなお前?」
隠しきれない嬉しさに尻尾が生えれば、それを見透かしたようにまた撫でられることとなった。