第2章 桜の前
いつぶりだろう、こんなに眠れたの。
目を覚ますと、そこにはいつものように連勝が…
「…!お、目ぇ覚ましたか」
『え…え、な、なにしてんの』
「手前が寝付いちまって動けなかったんだよこの不眠症野郎が」
朝イチ…というかなんというか、明るくなりたてのそんな時間。
私が抱きついて離さなかったのは連勝、ではなく、上司・中原中也その人だった。
『う、嘘、なんで私が寝れて…!!…ああ、こき使われてやるんだったっけ』
ああ、思い出した。
この人…
「そうだ、職務放棄したら殺すからな」
『…えっ、無理じゃない??だって貴方、私に攻撃当てられないじゃ………あれ、なんで私が布団きて…?』
気が付いた、私に着せられた布団。
空調が効いてるとはいえ、まだこの季節は肌寒い。
だからだろうか、二枚着せられているのは。
いや、そんなわけがない。
それだと、私のこのちっちゃい上司が布団を着ていないこの状況に説明がつかない。
『……やっぱり馬鹿ね、馬鹿上司だわ』
「起きてすぐそれか手前…話あっからとっとと布団から出てこ………、…い、…」
バッと剥ぎ取られた掛け布団。
行く宛を失った手で素知らぬ顔で髪をいじってそっぽを向く。
つい、気が緩むから。
「…おい、お前耳生えてっけど?すっげぇ尻尾振ってっけど?なぁ」
『幻覚でも見てんじゃないの?やだやだ、これだから脳筋は』
「じゃあ俺に見えてるこの幻覚が?なんでこんなにあったけぇんだ?おい」
『ふにゃッッ、!!!?!?』
ギュ、と唐突に掴まれた尻尾に、飛び跳ねる。
な、なんてことしてんのこの人…なにしてんのこの人。
「え、」
『…さ、最低…最低、変態っ、セクハラ上司!!パワハラ幹部!!!変態!!!』
「へ、変態…ッ!!!?」
わなわなと睨みつける、上司だけど。
そんなデリケートなところ突然掴むとか信じらんない。
「おはようリア、どした?朝からそんな襲われた乙女みたいな声で叫____」
ラウンジにやってきた連勝に音速で抱きつきに行った。
『あ、あああああの変態がし、ししし尻尾…いきなり掴んで…っ、わ、私もうお嫁に行けないどうしよう連勝ッ』
「わぁ~、落ち着いて落ち着いて。リアちゃん可愛いし大丈夫だって…それに最悪、そこのお兄さんがもらってくれるっしょ」
『私脳筋はちょっと…』
「聞こえてんぞおい」