第12章 キツネアザミと矛盾の芽
『……りんご』
「もっと食うか?」
『…………ああ、中也さん。今何月?』
「七月末だな、どうしたリアちゃん?何か視える?」
何かを考えた様子で瞬きひとつせずにいた彼女が、食後にりんごを見つめてから……しばらくしてそれを食べ、にこりと笑った。
『ん〜……まとまったらまた言うね。あと残夏くんはこれに関しては干渉禁止』
「それを言うならリアたんこそ行かなくていいでしょ」
『そうでもないわよ?まあ捕まる確率は上がるでしょうけど、中也さんいるし』
「あ?捕まる???」
『考えがまとまったら中也さんには話すってば。下手なタイミングで話すと“聞かれちゃう”でしょ』
誰に、とは言わないがこの子がこうして笑顔を貼り付けている時は、ある種のSOSのサインである。
今は黙って従えということだろう、そうでなくて困っているのならば彼女は助けを求める顔を出してしまう質であるし。
「信用するぞ?」
『死にはしないから安心してよ』
「あのなぁ」
『だって中也さん絶対来てくれるでしょ?』
ごく自然に出た信頼の言葉に感慨深くなった。
やべぇ、あのリアが俺を宛にしてくれている。
あのリアが。
『親バカ』
「リア〜〜〜パフェも作ってやろうか、それともケーキ??」
『今食べてるこれは???』
「何言ってんだリアちゃん、フルーツタルトはタルトだぞ?」
『あの中也さ……そんなにいっぱいはあの』
「リアたんとんだシークレットサービス育てちゃったねえ?調教されてたのってリアたんだけじゃなかったんだ?」
そんなつもりは、と慌てるリアだが俺が証明してしまっているため何も言えなくなったのだろう。
あー可愛い。
『……?あ、あれ?なんでさっきから撫でてるんですか』
「リアちゃん、実はデザート食べさせて始めてからずっとこうだぞ」
『だからこんなにずっと可愛い可愛い連呼して……ッ!!』
常に俺の心の声で愛でられていては鬱陶しかろう、可愛い奴め。
「中也たんからの可愛いは通常運転なんだねえ?」
「当たり前だろ、相手リアだぞ」
『あなたはもうちょっと恥じらいというものを「とうの昔に忘れたなぁそんなものは」助けて連勝そろそろ供給過多』
「ええ〜、こっちにきても俺に同じように可愛がられるだけだと思うけど?」
『分かった凜々蝶ちゃん!』
「右に同じく」
『なんで!!?』