第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
独り占めしたい…それも、どうしてか親しい人を相手にしても、渡したくないと思ってしまう。
けれどその感覚を表現するには、大切だからという表現では少し言葉足らずで、自分のものだからと言うには少し言葉が曖昧で。
私の心にすうっと入ってきたのだ。
すとんと、簡単に腑に落ちてしまったのだ。
なぜならば、既に私はこの目の前の人によって…この人に、同じような感情を抱いたようなことがあるのだから。
私はそれを、知ったから。
「…俺、男だけど」
『馬鹿にしてんの…?』
「い、いやそうじゃなくて。…苦手じゃねえかと思って」
『……惚れさせてくれるんでしょう…?怖いこと、しないって…約束してくれてるじゃない』
「!!!…お前、結構男前だな?」
『中原さん、そういう人だと思うから。…あと熱のせいだから、これは』
嬉しいのかなんなのか、にやけそうなのを我慢するように口をつぐみながら、中也は私を更に抱きしめた。
ああ、そうか、言葉が見つかるってこういうことか。
想い人からの…ということにしていいのだろうか。
こればかりは、身体の方が正直らしい。
『ん、…ちゃんと言って。私、回りくどすぎる人より男らしい人の方が好き』
「……リア」
『はい』
「…絶対、後悔させねぇって誓う。絶対に俺の事好きに、させてやるって……お前のこと、俺にくれる?…俺が、お前の恋人でもいい…?」
『……言い切って。私はそんなんじゃ手に入ってあげません』
「…逃げ道残してやってるってのによ。…手前今から俺の女な」
そう、それでいい。
そのくらいの方が、安心して任せちゃえる。
怖くなった時の免罪符にさえできるような、そんな告白でいいの。
その方が、私は嬉しいの。
『…ん、いいよ。…ごめん、今ゾクってした』
「何、抱けっつってる?熱ある奴のこと抱く気ねぇけど」
『……風邪うつっちゃいけないから、何か食べさせて』
「…キスしたいって言ってる?もしかして」
仕返しだと言わんばかりに、聞いてくる。
それに目を蕩けさせて、妙に色気を感じる彼を見つめてしまう。
『…中原さん、ちょうだい』
「恋人なのにまだ中原さん呼び?」
『……指で、いいから…』
「じゃあ中也って呼べる?…呼べたら指食べさせてやる」
滅多に外さない手袋を外して、それから唇を撫でられるものだから。
たまらなく、なるのだ。