第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
『……結婚詐欺とかなら、殺しに行く、からね』
「安心しろ、手放すつもりねぇよ」
『…熱のせいにしていい、ですか…?』
「……いいよ。ただし取り消させるつもりねえから。…俺に無理矢理そういうことにされたって言ったっていいし。ただ、本気で俺のもんにすっから覚悟決めるなら今だぜ?」
本気なのだろうか、この人は。
怖いけれど、これが嘘だった方が…後でもっと辛くなるからと。
最低だけれど、心の声を聴いてみて。
____俺そんなに分かりにくいのか…?いや、恋愛経験ねえならこんなもんなのか……まだ怖がられてんのかねぇ。
こんな頭ん中いっぱいにさせられる存在、俺だって初めてだってのに。どうしたら意識すんだよ…あんま意識させねぇ方が男だし怖がらせねえのかもしんねぇけど____
想像以上に緊張したような、深く深く考え込んだような。
それだけで、いかに私を思ってくれているのかなんてこと明白で…決して利用してやろうとか、そんなやましい気持ちじゃなくて。
『……私の言うこと絶対聞く?』
「聞けることならな?俺お前の犬らしいし」
『ひ、否定して下さいそういうのは……恋人、って…どういうの、なんですか…?』
私が分からないのは、そこ。
恋愛感情もそうだけれど、そういう存在になるってことが、どういう事なのかが分からない。
大切ってことは分かる。
けど、それこそ大切な人なんて他にもたくさんいるはずで。
「…ふとした時に、ああ好きだなって考えちまう。何かに感動したら、それを共有したくなっちまうし…それに、親しい奴にさえ渡したくなくなっちまうんだよ」
これは俺の場合だけどな、と言ってから、彼はその先を言葉にした。
「そうなった時とか、離したくねえ時に、恋人でもなかったら何も理由に出来なくなっちまうような時がどうしても出てくるんだよ。…堂々と、誰にでも俺のだからって言えるような、そういう形が欲しいんだと思う」
『……私のこと、独り占めしたい?』
「…したい」
『そ、う……だったら、いい』
私の声に、少し声を落としてから彼はそうか。と口にした。
「まあ、出会って何ヶ月かの男に迫られてもって話だわな。悪い」
『え…、なんで謝って…?』
「あ?かなり困らせたろ?」
『…お付き合いするって、言わなきゃ…分かんないん……です、か…?』
彼の目が、見開かれる。