第11章 珪線石の足音
遊撃隊に先に突入させ、逆サイドからこちらが潜入。
あいつのよくやるやり口に支障のないようにと思ってそうするのだが……なんというか、あいつを見つけたところで既にそこは抗争地帯と化していて。
「準幹部がいっぱい!?」
『!!?へっ、なんで中也さんが……っきゃ!?』
分身が一斉にこちらを向いてしまって、その隙にと刃物を振りかざされ、腕を掠ったらしい。
そいつの血の色を捉えた瞬間にブチッと何かが切れる音がして、重力操作で辺りの敵共をひれ伏せさせれば、リアにマシンガンレベルの銃弾の雨が向かってくる。
俺は未だに眼中にも無いらしい。
即座に異能で駆けつけて周囲を護るように重力を捻じ曲げれば、ぴたりと止まった弾がバラバラと地面に落ちていった。
『…………あっ、リアの分身全滅した!!何してくれてるんですかせっかくいいところだったのに!?』
「何してるんだはこっちのセリフだ!!何度言ったらわかる、おまえまだ昨日の単身突入の報告書も反省文も提出してないんだぞ!」
『提出したわよ、単細胞幹部が見逃してるだけでしょう!?文句言われる筋合いありません〜っ、リアちゃんとメールで送りました〜!!』
「何子供みたいな言い方して____」
「舐めやがって……!!!」
飛んでくる気配に手が動いて、そいつに向かっていた弾を指で掴んで止めた。
「ッチ……おいそこの塵、今これ撃ったの手前か。誰に撃ってんだおい、うちの愛娘の珠の肌に既に二箇所は傷がついてんだよ、ああ???」
指で弾いて地面にめり込ませると、そいつは情けない声を上げて逆らわなくなった。
他の奴らも戦意を喪失したようだったので向かって行き、髪を掴んでその面をよく拝んでやる。
「見ろ、あの美人の肌に怪我が出来ちまった。どう思う?世界の損失だよなあ?」
「おい、誰かあの人止めてこいよ」
「いや無理だろ、リアさん足も撃たれてるっぽいし」
「中也さん、そいつらもう降伏してますって」
『美人とか言ってる、ウケる』
「「「報われてねえぇ……!!!」」」
報われてない?そんなわけあるかよ、どっからどう見たって両想いだろうが。
「あんな美人に武器なんざ向けやがって、危ないよなぁ?どう思う、手前は」
「あ、危ない……です」
「当たったら痛ぇの間違いだろうが!!」
「「「理不尽!!!」」」
「リア、とっとと帰るぞ」