第11章 珪線石の足音
あれからというもの、あいつは少し……
『幹部が間抜けだから先に終わらせちゃった♪』
かなり?
『あー危なかった、怪我してないですか?』
『やっばい、鬼がきた』
『リア先に寝とくから〜』
だいぶ、舐めてきた。
そう、まるで俺を試す……というか、遠ざけるのに必死なまでの舐めた態度。
いやまあこんなだったような気がしなくもないが、確かにあの時おまえはやってみればと言った。
そうさせてもらうさ、俺のしつこさ舐めんじゃねえぞ。
「だあああっ、どこ行った!!!立原、白縹見かけなかったか!!?」
「ええっ、中也さん!?準幹部ならさっき首領に任務もらって北方の抗争に向かって行きましたけど」
「なんっっっでまたあいつはそんな危険なもんばっかり……!!!」
危険って、と呆れたようなリアクションの立原だが、危険なものは危険だろうが。
「あいつはか弱い乙女なんだよ」
「準幹部ですよね?」
「そうだ、俺が見てねぇとすぐに無茶す____」
かかってきた電話は、首領からのもの。
「中也君今どこ?君のところの可愛い可愛いリアちゃんだけど、どこかのスパイが君の周辺を嗅ぎ回ってるとか言い始めて一人で今度は西に行っちゃったんだけど」
「待ってください首領、先程北に行ったばかりだという情報を得たところなのですが???」
「瞬殺だったそうだよ?というわけであの子止めてきて、これから危ない時間帯になるから。あの子中也君の言うことしか聞かないし」
「俺の言うことも聞くかどうか最近だいぶ怪しいですが」
「頼んだよ……よっぽど懐いてるらしいねえ、健気な子じゃないか。何してあげたのさ」
「随分なつき度が下がったように見えますが?先日遂に出て行かれてしまいましたし」
「あはは、中也君の仕事減らすって張り切ってたけど」
やっぱりな、と引き攣る顔を隠しもせずに部下達に招集をかけ、急いであいつの元に向かう。
「!なんだよ芥川までいるのか」
「僕はリア殿の護衛ゆえ」
「護衛って……ああ、それで首領が妙に把握してるわけだ。んで?あいつはどこに喧嘩ふっかけに行ってんだよ」
「敵対している西のギャングが連合軍になったらしく、五つの組織が手を組んだとか」
「首領が指揮を取る予定だった奴らの拠点じゃねえか、何やってんだあいつ!!?!?!?」
俺のせいか、俺のせいだな間違いなく。